@落語 #道重さゆみ #水卜麻美#桝氏「さゆみの引退レター」「朝の顔の戦友」
「さゆみの引退レター」
いやぁ皆さんね、世の中ってのは引き際が難しいもんでございまして。
「もう限界です」ってのを、誰が一番素直に言えねぇかっていうと……大体は政治家と芸能人でございますな。
で、今回のお噂は、あの道重さゆみ。モーニング娘。の黄金期を支えた大看板でございますよ。
何がすごいって、引退にあたりまして便せん12枚に直筆の手紙を書いたってんだ。ピンクの便せんにリボン描いて、「私を愛してくれたみなさんへ」だってさ。
……この時点で、すでにおじさんは涙腺が崩壊寸前ですよ。だって俺なんか、区役所に提出する離婚届だってA4一枚にサインで済ませたんだからね。
で、その中身がまたすごい。「本当は直接話したかったけど、不安でできなかった」「後悔したくないから手紙にした」……と。
これ読んで俺思ったね。「おい、さゆみ、お前それはまんま俺らがファンレター書くときの気持ちじゃねえか!」
要は“ファンとアイドルの立場がひっくり返った”ってことだよ。これがすごいんだ。
だいたいね、アイドルの世界ってのは、笑顔とリボンで出来てると思うだろ? 違うんだよ、裏側は汗と胃薬と睡眠導入剤でできてんの。
「可愛い」って言われるのは一日三回までが限度で、それ以上は労働災害だからね。
で、さゆみちゃん「もう限界だった」って言った。
これ、笑っちゃいけないけど笑えるんだよ。だってさ、ファンは「さゆみが限界なんて!」って思うだろうけど、本人にしてみりゃ限界どころかオーバーランしてんだよ。
それでも立ってたのは、舞台のライトが強すぎて足元見えなかっただけ。
ここでだよ、俺はハタと思うわけだ。
引退する時に「ありがとう」って言うのは普通なんだよ。でも12枚にわたって「ありがとう」って言うとね、途中から「これ、遺書じゃないか?」って気がしてくるんだ。
いや、ほんとに縁起でもないんだけど、芸能界ってある意味“生きながらにして死んでいく”世界だからさ。引退ってのは一回葬式をやるようなもんなんだよな。
で、観客はみんな泣く。「ありがとう、さゆみ!」って。
でも俺はちょっとひねくれてるから思っちゃうのよ。「その涙、どのくらいが本物で、どのくらいが“推しが卒業するときのお約束”なんだろう?」ってね。
だってアイドルって、卒業公演やるたびに泣かせ商売やってるじゃん。ファンも心得てて「ここで泣くと映像に映るからいい思い出になる」とか計算してんの。
これ、もう宗教かキャバクラかの違いくらいしかねえよ。
でね、俺が一番シビれたのは、さゆみちゃんが「普通に話すと後悔しそうだから手紙にした」ってところ。
これね、俺も昔女にフラれる時そうだったの。「直接会うと何も言えなくなるから手紙にした」ってね。
でも俺のはB5ノートの切れ端に「さようなら」一行だったけどな。
……そう考えると、12枚書けるだけ立派だよ。アイドルは別れるときまで可愛くなきゃいけないんだ。
たださ、この「限界だった」って言葉。
これ聞いてピンときたのは、実はファンのほうなんだよ。俺たちファンだって限界なんだよ。推し活で金も時間も削ってさ、現場に通って、グッズを部屋いっぱいにして。
結果どうだ? 「推しが卒業」ってなったら、一気に空洞だよ。財布も心も空洞。
だから本当はファンも言いたいのよ、「もう限界だった!」って。だけど言えない。そこがまた切ないんだよな。
――で、オチがね。
引退公演が終わった夜、ファンの一人がピンクの便せん12枚にこう書いたんだって。
「さゆみへ 君が限界なら、俺も限界だ。けど、俺の引退公演はどこでやればいい?」
そしたら隣のヲタが即座に言ったんだよ。
「区役所の婚姻届の隣に“推し活卒業届”置いとけ!」
……ってんで、世の中まだまだ引退できねえ奴でいっぱいでございます。
おあとがよろしいようで
2幕目
「朝の顔の戦友」
えー、みなさん。朝が苦手って人、いらっしゃいますか?
……おいおい、手ぇ挙げた人、さっきまで寝てた顔してるじゃないの。朝ってのは不思議なもんで、みんな「爽やかに迎えたい」なんて言うけど、実際は目覚まし時計に何度も裏切られて、枕にしがみつく修羅場なんです。
ところが世の中にはね、そんな人間の「朝のだらけ具合」を毎日テレビで叩き起こしてくれる人がいる。そう、日本テレビの「ZIP!」。
朝5時50分から始まる。え? 5時50分? おいおい、視聴者の半分はまだ布団の中だぞ。
でもまあ、そんな時間にテレビをつけると、画面の向こうにはアナウンサーが「おはようございます!」って満面の笑みで立ってる。……これがまた腹が立つ。人間、朝の5時台に笑顔ってのは生理現象に反してるんだよ。
で、その「ZIP!」の顔だったのが、初代の桝太一。大学では理系で真面目に研究してたのに、気づいたら朝の顔になってた。で、次にバトンを受け取ったのが水卜麻美。この二人の関係がね、ただの先輩後輩じゃない。“戦友”って呼ばれてるらしい。
え? アナウンサーが“戦友”? なんの戦争だよって話でね。朝の情報番組ってのは、ニュースと天気と芸能とくだらねえコーナーをひとつの鍋にぶち込んで、視聴者の胃袋に無理やり流し込む。これを毎日やるわけだ。もう戦場だな。
で、桝が言うんだ。「ZIP!はチームワークの番組です」って。いやいや、あんた、大学の研究室に戻っても「この試薬はチームワークで」って言うんじゃないか? 試薬とピペットにチームワーク求める研究者、信用できねえな。
で、その桝が久々に「ZIP!」に帰ってきた。水卜アナ、感極まって大号泣。テレビで泣くアナウンサーって珍しくないけど、あの人の場合はガチなんだ。
「桝さんのバトンをちゃんとつないでます!」って。泣きながら言う。……いや、駅伝かよ。情報番組がたすきリレーになっちまった。
でもね、泣きながら「桝さんも頑張ってください!」って言ったんだよ。先輩に向かって「頑張れ」って、どんだけ体育会系の部活ノリなんだ。これがアナウンス部ってやつか。
ところがその裏話がまたすごい。水卜が「ZIP!」に就任した当時、朝2時に起きなきゃいけない。でも寝坊が怖くて酒もやめて目覚まし時計を山ほど並べてた。そこに桝が「桝目覚まし時計」って、毎朝LINEで起こしてたんだと。
なにそれ、先輩が後輩のモーニングコール係? あんた、それ恋人じゃねえか!
だいたい、桝は理系の男なんだから、「水卜くん、今から君の脳波に直接刺激を送って起こしてあげよう」とか、新しい実験で起こせばよかったんだよ。電話で「起きてる?」って、ただの母ちゃんじゃねえか。
だけど考えてみると、人気アナウンサーってのも悲しいもんでね。どっちも「好きなアナランキング」で5連覇して殿堂入り。大衆に愛されるってのは、裏を返せば毎日大衆の好感度に怯えるってことだ。
放送が終わったらすぐ「今のコメント大丈夫だったかな?」って反省会をやる。いやいや、それ視聴者は求めてないんだよ。こっちは「元気そうにしてんな」と思えりゃ十分だ。
でもね、人間ってのは人気者であればあるほど、裏で「自分は大丈夫かな?」って不安になる。これ、芸人だって一緒。俺だって高座降りるたびに「いまのウケ、ほんとに笑いだったのか? 失笑じゃなかったか?」って考える。
だから水卜と桝の“戦友関係”ってのは、実は「ネガティブ同盟」なんだよ。お互い落ち込みやすいから支え合ってんだ。
で、テレビ局の関係者が言うには「二人でよく食事もしてた」って。……あのな、朝番組の司会者が夜に飲み会してたら、翌朝5時50分のテンションどうやって作んだ? 焼き鳥食ってビール飲んで、そのまま「ZIP!」で「おはようございます!」って、どんな二日酔いバラエティだよ。
でも水卜は酒好きなのに「ZIP!」のために禁酒した。……これこそ戦友の証だな。戦地に行く兵隊も煙草はやめないけど、この人は朝の情報番組のために酒をやめたんだ。そりゃ泣くわけだ。
で、最終的に何が言いたいかっていうと、こういう「人気者同士の戦友関係」ってのは、見てるこっちには羨ましいようで、実際は“過酷な目覚まし同盟”なんだよ。
普通の人間なら「今日は会社遅刻だ!」って布団に潜っていられる。でもこの人たちは国民に「朝を届ける義務」がある。寝坊できねえ。もうそれは戦争だ。
だから桝が大学に行ったとき、水卜が泣いたのはね、「ああ、戦場から脱出した先輩が久々に帰ってきてくれた」っていう安堵の涙なんだ。そりゃ泣くよ。
……だけどよ、泣きながら「桝さんも頑張ってください」って言ったろ? あれが笑えるんだよ。
桝はもう大学の研究室でピペットと格闘してんのに、「ZIP!」の後輩に「頑張れ」って励まされる。戦友ってのはいいけど、結局あんたら、ただの「朝が弱い者同士の仲間」じゃねえか。
――てなわけでみなさん、明日の朝は5時50分に「ZIP!」を見てください。きっと水卜が涙の分だけ大きな声で「おはようございます!」って言いますよ。……ただし、こっちは布団の中で「うるせえな」って言いながら二度寝するんですけどね。

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