岩手・宮城内陸地震で大きな被害を受けた宮城県栗原市に、日本最古の染色技法と言われる「正藍冷染(しょうあいひやぞめ)」を継承する男性がいます。その男性は、5月、技法を一から教わった母親を亡くし、悲しみを乗り越えながら生地を染め上げる作業に励んでいます。
「正藍冷染」は千葉家で代々受け継がれてきた
正藍冷染を継承している栗原市栗駒文字の千葉正一さんです。正藍冷染は染料となる藍の生産から染色まですべての工程を昔ながらの手作業で行い、千葉家で代々受け継がれています。4代目の千葉さんは、この日も、自宅わきの工房で「こが」と呼ばれる大型の桶で発酵させた藍の染料に、生地を浸して染める「浸し染め」の作業を行いました。4代目 千葉正一さん(73):
「いい色が出ている。安心して染められる」千葉家では毎年、6月に浸し染めが行われますが、15年前、あの大地震に見舞われました。
藍の染料は全て捨てることに・・・
2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震。最大震度6強を観測した栗原市では、栗駒山を中心に被害が相次ぎました。千葉正一さん(当時):
「もうここから見える。あの茶色の(地)肌」大規模な地すべりが発生した荒砥沢ダムに近い千葉さんの自宅では裏山が崩れました。そのため一家は、およそ3か月間、避難生活を余儀なくされました。当時、千葉さんの母親、まつ江さんは無念な思いを語っていました。3代目 千葉まつ江さん(当時78):
「藍水がまだ色があるように感じるが、普通は幕が張るのに全然幕が張っていない。使わなかったからだと思う」もちろん、染めることもできなくなり、大事に作り上げた藍の染料は全て捨てられました。あの大地震から15年。被災を乗り越え、今年も昔ながらの浸し染め作業が6月に入ってから始まりました。
まつ江さんの教えを胸に伝統の染色技法を守る
しかし、工房にはこれまでともに歩んできた母、まつ江さんの姿はありませんでした。千葉正一さん:
「(母は)ここで座っていた。やっぱりいる人が居ないと寂しい。特にここ工房の中は。いい色だねと見ていると思う」実は、まつ江さん、浸し染め作業を目前に控えていた5月25日、老衰のため亡くなりました。94歳でした。千葉正一さん:
「今年の2月ごろまでは普通にしていた。(体調が)急に悪くなった。とにかく優しい親だった」千葉さんは、先代の母親らと同じように工房近くを流れる「二迫川」の清流でていねいに水洗いし、独特の深みある色に染め上げます。今年は、藍の発酵などが順調に進んでいることから、6月末までに着物や浴衣などに使われる反物を例年とほぼ同じ15反ほど染め上げることにしています。4代目 千葉正一さん(73):
「教えられたことはきちんと守らないとこのような色は出ない。この技を教えてくれたのはおふくろ。1から10まで染め上がるまで種まきからそれはすごく感謝している」『母が染める色に少しでも早く近づきたい』と語る千葉さん。亡くなった母、まつ江さんの思いを胸にこれからも伝統の染色技法を守り続けます。母親のまつ江さんは18歳で千葉家に嫁ぎ、義理の祖母と義理の母から藍染を学ぶ。2010年に県の無形文化財指定されました。2017年には、技法の体得が認められ「旭日双光章」を受章。戦前までは千葉家がある文字地区で10数軒が藍染めを行っていたが昭和40年ごろには千葉家ただ一軒となった。
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