映画『山女』より、山田杏奈と永瀬正敏が本作の舞台となる岩手県遠野市の方言を話す本編映像が解禁となった。

 『リベリアの白い血』『アイヌモシリ』の福永壮志監督の最新作。2022年開催の「第35回東京国際映画祭」コンペティション部門、そして「第47回香港国際映画祭」ワールド・シネマ部門に出品された本作は、ドイツ・フランクフルトで開催される「第23回ニッポン・コネクション」、そして北米最大のアジア映画祭である「ニューヨーク・アジアン映画祭2023」への出品も決定し、海外からも注目を集めている。

 舞台は、18世紀後半の冷害に喘ぐ東北の寒村。先代の罪を負った家の娘・凛は、村人から蔑まれながら息をひそめて生きていた。そんなある日、凛の父・伊兵衛が村中を揺るがす事件を起こす。村人たちから糾弾される父をかばい、自ら村を去り禁じられた山に入る凛を待ち受けていたのは、伝説の存在として恐れられる“山男”だった…。

 柳田國男の名著「遠野物語」から着想を得たオリジナルストーリーとなる本作。自然を前にしてあまりに無力な人間の脆さ、村社会の持つ閉鎖性と同調圧力、身分や性別における差別、信仰の敬虔さと危うさを浮き彫りにしながら、一人の女性が自らの意志で人生を選び取るまでが描かれる。自分らしく生きること、人間らしさとは、何なのか。凛の物語と彼女の下した決断が、時代を超えて、こだまとなって私たちの明日に響く。

 国際共同製作となる本作の監督・脚本は、民族やルーツにフォーカスを当ててきた福永壮志。ニューヨークで映画を学び、グローバルな制作体制で独自の作品世界を追求してきた。初の長編劇映画である『リベリアの白い血』は「第65回ベルリン国際映画祭」パノラマ部門に出品され、2作目の『アイヌモシリ』は「第19回トライベッカ映画祭」で審査員特別賞を受賞し、国際舞台でその存在感を強めている。共同脚本に劇作家で、NHK連続テレビ小説『らんまん』を手がける長田育恵を迎え、現代につながる社会の歪みとそこに生きる人々の物語を作り上げた。

 この度解禁されたのは、凛と弟の庄吉(込江大牙)が、父親の伊兵衛(永瀬正敏)が寝静まった夜、囲炉裏の僅かな火を頼りに草鞋を編む日常を捉えた本編映像。先代の罪を背負い、卑しい身分に貶められている凛の一家は、間引きされる赤ん坊を川に捨てる役目や死体の埋葬の仕事を引き受け、家では草鞋編みの内職を行い、せめてもの食い扶持を稼いでいる。

 家の前に落ちてきた雀の雛を埋めたと告げる庄吉は「その時思ったった、こいづはこれで終わりなんだべかどて。早池峰山さ行がねぇのがな?」と問いかけ、「あそごさ行くのは人間の魂だけだ」と答える凛。庄吉が「人間なら、みんな行けるのが?」と尋ねると、「罪人も善人も、貧乏人も金持ちもみんなだ。早池峰の女神様は誰だって迎えでくれんだもの」と穏やかな表情を浮かべながら話す凛の姿から、彼女がどんな理不尽な逆境の中でも早池峰山を心の拠り所として、ひたむきに一家を支えてきたことがうかがえる。

 穏やかな時間も束の間、悪夢にうなされた伊兵衛が叫びながら飛び起きる。手を止めて様子をうかがう凛たちを伊兵衛が一瞥(べつ)すると、「薪いもったいねえ…はえぐ寝ろ」と言い放ち再び横になるところで映像は終わる。

 これらのせりふは全て、本作の舞台であり、早池峰山を有する岩手県遠野市の方言である遠野弁だ。脚本の段階でせりふを遠野弁にしていたという福永監督は「せりふを遠野弁の方言の先生に発音してもらったものを録音して、俳優の皆さんと共有して、撮影前にしっかり準備してもらいました」と事前準備を徹底したという方言へのこだわりをみせた。

 また、「やはり昔の話なので、どうしてもフィクション色は強くなるんです。それでもできるだけリアリティを持たせたくて、昔、話されていた言葉により近い方言を生かすことで、少しでも現代との差を埋めようとしました」と続け、この遠野弁が作品の世界観を構築するための重要な要素であることを明かしている。

 これに対し山田杏奈も「遠野弁のせりふを話すことで、あの時代のあの世界に生きている子だという自覚も芽生えました」と話しており、遠野弁のせりふが作品のリアリティだけではなく、演者の役へのアプローチにも作用していたことがわかる。さらに、山田は家で実際に草履を編む練習をしていたと言い、余念がない準備で撮影に臨んでいたようだ。

出演:
山田杏奈
森山未來 二ノ宮隆太郎 三浦透子 山中崇 川瀬陽太 赤堀雅秋 白川和子 品川徹 でんでん 永瀬正敏
監督:福永壮志 
プロデューサー:エリック・ニアリ 三宅はるえ 家冨未央|脚本:福永壮志 長田育恵
撮影:ダニエル・サティノフ|照明:宮西孝明|美術:寒河江陽子|録音:西山徹
整音:チェ・ソンロク|編集:クリストファー・マコト・ヨギ|音楽:アレックス・チャン・ハンタイ
装飾:柴田博英|衣装:宮本まさ江|メイク:金森恵|かつら:荒井孝治|特殊メイクデザイン:百武朋|VFXスーパーバイザー:オダイッセイ
助監督:北川博康|制作担当:大村昌史|エグゼクティブプロデューサー:安田慎 中林千賀子 白田正樹|プロデューサー:白田尋晞
制作プロダクション:シネリック・クリエイティブ ブースタープロジェクト|国際共同制作:NHK|制作協力:CLIP PICTURES LA
製作:「山女」製作委員会|助成:文化庁文化芸術振興費補助金(国際共同製作映画)|配給:アニモプロデュース|配給協力:FLICKK
2022年/日本・アメリカ/98分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
HP: https://yamaonna-movie.com/
Twitter/Instagram: @yamaonna_movie
(C)YAMAONNA FILM COMMITTEE

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