特集『キャッチ』です。高校生2人が犠牲になった福岡県粕屋町の飲酒運転事故から9日で11年です。被害者のひとり・山本寛大さんの同級生は、ラジオ局・エフエム福岡のアナウンサーになりました。亡き友に誓う飲酒運転ゼロ、その覚悟に迫ります。

9日、エフエム福岡で行われていたのは、ラジオドラマの収録に向けたオンラインでのリハーサルです。

ドラマのタイトルは『果たせぬ、あのころの夢は…』です

11年前、高校生2人が犠牲になった飲酒運転事故の実話で、2月27日の放送に向け、準備が進んでいます。

■愛智望美さん
「きょうは寛大の命日で、リハーサルが、この日になったのも何かの運命のような。」

画面越しに出演者たちに語り掛けているのは、FM福岡のアナウンサー・愛智望美さん(27)です。制作者のひとりとして参加しています。

ドラマの脚本は、11年前の事故で同級生を失った愛智さんの目線で書かれました。

愛智さんが中学3年の時に、クラスの皆で映った体育祭の記念写真です。最前列に陣取っているのが、中学1年の時も同じクラスだった山本寛大さんです。明るくて優しく、クラスの中心的な存在でした。

愛智さんにとって、寛大さんとの忘れられない思い出のひとつが、中学卒業を前に、将来の夢を語り合ったことです。そのシーンは、ドラマでも描かれます。

■愛智さん役の生徒
「将来、何になりたいと?私はねえ、アナウンサーになりたい。」

■寛大さん役の生徒
「俺の夢は、なんかよう分からんけど、農業に携わるような仕事がしたいっちゃんね。」

お互い夢に向かって、別々の高校に進みました。
しかし、その翌年の2月9日深夜、寛大さんは、福岡県粕屋町酒殿の町道で、後ろから走ってきた車にはねられ、命を落としました。一緒にいた友人の皆越隼人さんも犠牲になりました。2人の命を奪ったのは、飲酒運転の車でした。

愛智さんが一報を目にしたのは、翌朝のテレビニュースでした。

■愛智さん
「母親から、『これ寛大くんやない!?』と言われて、名前を目にして、私の知っている山本寛大だよなと思いながらも、『え、嘘やん!?』。信じたくない気持ちで、とにかく涙が止まらなくて。」

誰もが悲しみに暮れる中、いち早く動き出していたのが、寛大さんの母・美也子さんでした。

その美也子さんから依頼を受け、愛智さんは大学時代、飲酒運転の撲滅を訴える
テレビCMに出演したこともあります。

アナウンサーを目指していることを知った美也子さんの勧めで、CMのナレーションも
担当しました。

どんなに月日がたっても、あの時の思いは消えないままです。

■愛智さん
「当時高校生1年生だった私たちは、飲酒運転という大人の身勝手な行為で、大切な友達が亡くなったことに、大きな怒りと悲しみを覚えました。10年もたったのに、世の中から飲酒運転がなくならなくて、本当に悔しい思いをしています。」

愛智さんは5年前、寛大さんと語り合った夢をかなえ、アナウンサーの仕事につきました。

■ラジオ
「DIG。飲酒運転撲滅キャンペーン、ストップ飲酒運転。」

去年8月からは月に1度、生放送の番組の中で、飲酒運転の撲滅について啓発する
5分間のコーナーを任されています。

■愛智さん
「福岡県にいると自転車に乗る機会も多いのかなと思うのですが、その自転車は、お酒を飲んで乗ると、飲酒運転になってしまいます。」

■斎藤ふみさん
「自転車なら大丈夫だと思っている方が多いということなんですね。」

■愛智さん
「そうなんですよね。」

飲酒運転の罰則などの知識だけでなく、同級生を亡くした自分の経験を率直に伝えることもあります。

■エフエムふくおか・縄田和彦編成制作事業部長
「飲酒運転撲滅という彼女から発信できる意義は、とても大きいというか、少なくはないと思う。」

愛智さん自身は当初、アナウンサーとして『個人的なこと』を語ることに迷いもあったと言います。

そんな背中を押してくれたのは、リスナーの存在でした。

■愛智さん
「例えばリスナーさんから、そうだったんだ。あの時の事故がという反応が返ってきたりとか。これは本当に大きな声で発信していくことに、ちゃんと意味があるんだなって思えるようになりました。」

飲酒運転をゼロにしたい。愛智さんが思いを新たにする中で、寛大さんとの実話をもとに、ラジオドラマを制作する話が持ち上がりました。

■愛智さん
「本当に席が近くて、寛大はそれまで、そんなに勉強に本腰入れていなかったんですけれど、もう受験前にいよいよ頑張らないかんとなって、自然と教えるように。」

■脚本を担当する山下昌さん
「どっちかが教えてっていう感じではなく。」

■愛智さん
「寛大が教えてって言って、そうそう。」

楽しかったことも、悲しかったことも、ひとつひとつ思い出しながら、脚本の担当者と打ち合わせを重ねてきました。

ドラマで愛智さんや寛大さんの役を演じるのは、声優や歌手などを目指す専門学校の生徒たちです。

当時はまだ幼く、事故のことを知らなかった人も少なくありません。

■愛智さん
「いつでも被害者にも加害者にもなりうる。当時の私の葛藤だったりとか、大人になっての心境の変化とか、そういったところをラジオドラマに込めて、もちろん飲酒運転がゼロになるよう届けたいと思います。」

『もう誰も、突然、夢を絶たれることがないように、自分のこととして考えて、伝えてほしい』という、愛智さんの思いに触れた若者たちにも、新たな思いが芽生えていました。

■永田穂乃佳さん(19)
「自分自身が関係ないって 思っていることでも、身近にあったりするもの。ひと事と思わないように生きないといけないなと思いました。」

大切な友を失った同級生として。そして、アナウンサーとして。その責任を胸に、愛智さんは、思いを届けていく覚悟です。

■愛智さん
「アナウンサーとして福岡の飲酒運転がゼロになるように発信していく立場として、当時のことを鮮明にお伝えすることは私のなんだろうな。“使命”だと思っているので、しっかりと伝えていきたいと思います。」

#FBS福岡放送 #めんたいワイド

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