*ビデオテープの劣化の為、CD 音源とビデオ映像に、大きな「ズレ」が生じています。ビデオテープの方をご試聴ください。https://youtu.be/OpOJ9vpOfzA

[Medical Student plays Chopin] -No.5-
Chopin : Scherzo No.1 in B minor op.20
by Masao Takahashi : Concertpianist, Bachelor of Medicine
髙橋音楽事務所 代表 : 髙橋 真生 (ピアニスト、医学学士)
15th February, 2000
Ehrbar-Saal (Prayner Conservatorium) in Vienna

*ビデオテープの劣化の為、CD 音源との「ズレ」が生じています。ビデオテープの方をご試聴ください。https://youtu.be/OpOJ9vpOfzA

このスケルツォは、ショパンがウィーン~Stuttgart滞在中に作曲されたものだと恩師 Prof. Joo Ann Koh から聞き、4曲あるスケルツォの中から、このスケルツォを選んだ記憶があります。
祖国ワルシャワ蜂起の報を受け取った二十歳のショパンの心中を察することなど、平和な日本で育った私には想像もできませんが、ドイツ語学校のクラスメートの母国であったユーゴスラビアの内戦が勃発したとき、2m以上もあるプロバスケット選手でしたが、145cmしか身長がない私よりも、そのときは小さく見え、掛ける言葉が一言も見付らなかったあの日のことを思い出し、この曲の解釈と演奏に活かしました。

このスケルツォは一般的に、かなり、激しく、悲痛の叫びを上げるかのように演奏されますが、ショパンは音楽で全てを「昇華」していますので、聴くに耐えないような、fff. 大げさな感情表現は相応しくありませんので、私は無感情を装い、いとも簡単そうに、サラッと弾いているように感じられるように演奏されるべきだ、と当時の私は思ったものです。
しかし、海外で祖国の蜂起を聞いた若きショパンの「孤独」や「帰郷」の想いを無視したわけではありません。帰る国を無くし、家族とも会えなくなった旧ユーゴスラビア人のあの日の姿は今でも私の心に痛みを伴いながら焼き付いています。

「同じことを2度やるな」というのが、恩師の教えです。
ただの繰り返しではなく、意味があって、繰り返されたわけですから、ピアニストは別のフレーズとして、捉えるべきでしょう。
同じ言葉を3度、書く場合、「悲しい!」、「悲しい・・・」、「悲しい」等、色々、あることと同様です。
激しい部分から、中間部の美しくも切ない旋律はポーランドの有名なクリスマスキャロル”Sleep, little Jesus” が元になっています。
当時、私はこの中間部への移行、中間部の解釈に悩んでいましたが、恩師が「これは、小さなイエスを抱いた聖母マリアの子守り唄だ。聖母マリアは、イエスが我々の罪のために死ぬことを知っていた。自分の腕の中で眠っている幼子が自分よりも先に死ぬことを知っていたのだから、聖母マリアの悲しみが込められているのだよ」と教えてくれたとき、私はクリスチャンですので、涙を堪えられませんでした。
速い部分より、この中間部の解釈と練習に時間を費やし、感情的にならないように、自分をコントロールするする心の訓練も必要でしたが、本番になると、どうしても、自分をコントロールする余裕を無くしてしまい、多少、個人的な感情を抱いて演奏しているところが、まだ、素人からプロになりきれていない証明となるでしょう。

「自分がどう感じるか?」ではなく「作曲家がどう演奏してもらいたいと思って書いたのか?」ということを徹底して出来るようになったとき、国際ピアノコンクールで入賞し、プロのピアニストとして、世界的に認められたわけですが、この当時の私にはそれが出来ていませんでした。

ウィーンでクリスマスを過ごしたショパンが故国のクリスマスキャロルをこの曲に使ったということは、非常に感慨深いものがありますが、演奏家は自己満足の感情を抱いてはなりません。
これは、プロとして、あってはならない「悪い例」として、プロの演奏家は参考にして下さい。

この曲の速い部分は小学生でも弾けます。
しかし、中間部のように、音楽的に非常に深い意味を持つ部分を適切に演奏できるのは、現代の「天才キーシン」だけでしょう。

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